
看板の起源をご存知ですか?
日本における看板のはじまりは、お店で売っている実際の商品を軒先に吊るしたり並べたりしたものだと言われています。
奈良時代にはすでにあった「実物看板」という文化

筆や笠などを軒先にぶら下げている様子が、奈良時代の絵巻物にはすでに描かれているそうです。こういったものを「実物看板」といいます。
しかし、小さなものやお酒などといった液体のもの、魚などの生モノなどは店頭に飾りようがありません。そこで、板に絵で描いたり、形を象ったものを飾るようになっていきました。
さらに、そこから看板には単に何を売っているかという情報伝達以外に、効果的に宣伝するという側面が生まれ始め、江戸時代に文化として大きく花開いたそうです。識字率が現代よりも低いため、絵模様で遊び心を盛り込んだ看板が多く作られました。
お餅屋さんからの「おまかせデザイン」の依頼
20年ほど前、知り合いのお餅屋さんから看板の依頼がありました。

デザインはすべてお任せします。
と一任してくださり、どういった看板にするかの提案からさせていただきました。
当工房ではこのように、具体的なデザインが決まっていない場合でもご相談いただくことがあり、お店や企業の特徴、想いなどをお聞きしながらデザインを提案しています。
工房から提案したのが、
・お餅をついている形そのものを象った立体看板
・屋号を彫り上げた文字看板
この2つです。
立体の方はまさに、先に書いたような実際の商品として売っているものを象った看板そのものです。最終的には両方ご依頼くださり、制作するに至りました。
文字看板の方は、形の面白い変木があり、それをそのまま使って作りました。工房には常に色々な材料を保管しているので、サイズや形状がちょうどいいものを選ぶことができます。


文字看板についてはまたいつか詳しく取り上げたいと思いますので、今回は《お餅を彫り上げた看板について》詳しくご紹介します。
長年使っていた臼を、看板に
我が家では年末に餅つきを杵と臼で行っていたのですが、依頼のあった数年前に取りやめており、長年使っていた臼が我が家の蔵で眠ったままになっていたので、それを使って作ったらどうかと提案すると、「それは面白い!」と言ってくださいました。
そうして、その長年使っていた本物の臼に屋号のロゴを彫ることになりました。
お餅の「もちもち感」を、手彫りで再現

杵でつかれているお餅部分は新たなヒノキで彫り上げることに。杵とお餅はひとつの木から彫り出しています。
お餅の最大の特徴は当然ながらもちもちとした食感とねっとり柔らかく伸びること。お餅を食べたときの美味しさはまさにそこにあります。
お餅屋さんの看板に硬く美味しくなさそうなお餅が飾られていたら、むしろ宣伝は逆効果。柔らかそうなお餅を木彫りで表すことに長年の勘と技術を注ぎました。
また、お餅部分には薄っすらと金色の塗料をがん吹き(塗料を霧状にして吹き付けて塗ること)しました。あくまで薄っすらとですが光って見えるようなお餅になります。
写実的なそのままのお餅ではなく、淡く光らせることで美味しさを表した仕様にしたのです。また、「黄金餅(こがねもち)」にすることでお店の縁起も担いでいます。
ありがたいことに、出来上がったお餅を見てお褒めの言葉をいただきました。

機能性とデザインの両立

お店がアーケードの商店街にあったこともあり雨の心配がありませんでしたから、看板は外に飾るスタイルになりました。「閉店時は看板を中に仕舞えるようにしたい」とのことで機能面も考えてキャスター付きにすることに。
臼に直接キャスターをつけてしまっては興ざめなデザインになってしまうので、それは隠せるように臼の下には三宝があるようにして隠しました。
三宝とは、神社やお寺でのお供え物の台としてよく使われているものです。お餅もよく乗せる道具でもありイメージ的にも相性が良かったので、採用しました。
また、お店の扉などには朱色が使われていて、色味的に漆塗りの印象があったので、それともマッチするように外側は黒、内側は朱色の三宝に仕上げました。
このように、制作の際には看板だけでなく、それを置く場所となる外観全体を通して良いデザインになるように心がけています。
20年経っても、美しい色と艶

この看板を制作したのは2007年で今から約20年前ですが、現在でもほとんど当時の色艶を残したままです。
アーケードの下なので雨に当たらないのと、夜間は室内に保管してくださることが影響していると思います。
「木製だと劣化が心配…」とよくお声をいただきますが、条件次第ではこのように長持ちしてくれます。
現代に蘇る実物看板の魅力は、世界へ
「実物看板」から派生した《売っている商品そのものを象った看板》は、文字情報が優位の現代で、逆に目立つ存在になりつつあります。訪れるお客様にはこの看板を写真に撮ってくださる方も。杵を手で持って写真を撮られる方も多いのだとか。

お店の方からは、

看板がこの様に《写真を撮ってもらえるもの》になるとは想像していなかったので、白雲工房にお願いして良かった!
と仰っていただきました。
思っても見なかった効果が、インバウンドです。江戸時代に識字率が低くて花開いた看板文化が、時を経て現代、日本語の読めない訪日客の方々に喜ばれる存在になりました。木彫りというアナログなところも日本の文化を感じられ、喜ばれる要因かもしれません。
工房で制作した看板が、時代、言葉、文化を超えて役立ってくれていることがとても嬉しいです。
天野餅屋さんは富山・砺波市にあります
さて、この看板の天野餅店さんのお餅、我が家でも20年以上お正月のお餅はこちらで購入しています。個人的には黒豆がたっぷり入った豆餅が大好きです。
井波のお隣り、砺波市にあるのでお立ち寄りの際はぜひ、天野さんのお餅も食べていただきたいです。
あなたのお店の物語を、職人と一緒に看板にしませんか。
まずは、お気軽にご相談くださいませ。
▼木のわ公式HP ご相談はこちらから

コメント